一戸建て売却の基本的な流れと成功ポイント

一戸建ての売却を考える際、多くの人が「売却の手続きや準備はどうすればいいの?」と疑問に感じることでしょう。 今回、一戸建ての売却に関する手続きや注意点を項目別に詳しく解説していきます。 特に、マンションや土地の売却とは異なる、一戸建て専有のポイントやヒントもお伝えします。 売却プロセスを大まかに説明すると、基本的に「売却の準備」「売却活動」「売却後の手続き」の3つのフェーズに分けられます。それでは、各ステップの詳細について見ていきましょう。

1. 一戸建て売却依頼前の確認事項

一戸建ての売却をスムーズに行い、無事成約するためには事前準備がとても大切です。不動産会社に売却依頼する前に確認しておきたいのが、「お金」「時間」「必要書類」についてです。
まずはこの3点に加え、売却依頼前に確認したい注意事項も説明していきます。

1-1. 売却価格とタイムラインを明確にする

売却を検討する際の第一歩は、目指す売却価格と予定のタイムラインをしっかりと確認することです。
売却に関わる費用も考慮に入れて、期待する価格を設定することが重要です。ここで注意すべきは、「理想の価格と市場価格が必ずしも一致しない」という現実を理解すること。近隣の売出物件の価格をチェックし、市場の相場を把握しておくことがオススメです。
相場の情報収集には、インターネットを活用するのが簡単です。例えば、三井のリハウスのウェブサイトでは、過去の取引実績をもとに、近隣物件の相場を知ることが可能です。

また、マンションと一戸建ての売却の違いにも目を向けると良いでしょう。国土交通省の公開データによれば、一戸建ての価格は過去10年間で大きな変動が少ないことが伺えます。これは、将来も安定した価格帯での取引が期待できるというサインとも言えます。
一戸建てとマンションでは、売却までの流れや所要時間が異なることも頭に入れておくと良いでしょう。多くの場合、一戸建てはマンションよりも売却に時間がかかるとされていますが、戦略やタイミングによっては短縮も可能です。計画を立てる際は、信頼できる不動産会社と相談して、最適なスケジュールを組むことをおすすめします。

1-2. 諸費用を確認する

一戸建て売却にかかる諸費用は下記の通りです。どのような費用がいくらぐらいかかるのか、各項目を押さえておきましょう。

仲介手数料 (売買価格の3%+6万円)×消費税
  • 売買価格が400万円を超える場合
不動産売買契約書に貼る印紙代 売却価格によって印紙代は異なります。
不動産の売買契約の場合、軽減措置制度があるので確認しておくとよいでしょう。
登記関係費用 抵当権の抹消登記費用・司法書士報酬等
測量費用 境界標の有無、敷地面積等により費用が異なります。
建物解体費用 取引条件等により必要になる場合があります。費用は建物面積等の諸条件で異なります。
所得税と住民税 マイホームを売却し、譲渡益が出た場合に課税されます。
税率は短期所有、長期所有により異なりますが、3,000万円の特別控除が利用できる場合があります。
引越し費用 荷物の量や引越し先の距離により異なります。

注意しておきたいのが、ローンが残っている場合は一括返済手数料が金融機関への手数料としてかかることです。諸費用は売却相談後、不動産会社の営業担当者が詳しく教えてくれるので、不明なところは遠慮なく質問しましょう。

1-3. 必要書類が手元にあるか確認する

一戸建ての売却には、いくつかの必要書類があります。手元に揃えて準備しましょう。

身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合のみ必要)に加えて、下記のものが必要です。

権利証もしくは登記識別情報通知書 法務局から登記名義人に公布される書類。登記識別情報通知書は、登記名義人がその物件の真の所有者であることを証明する書類
固定資産税納税通知書 固定資産税の納税額の確認のために必要となる書類
購入時の売買契約書 一戸建て購入時の売買契約書
購入時の重要事項説明書 一戸建て購入時に不動産会社から不動産に関する注意事項を記した書類
測量図 土地の形状や面積などが記された書類
境界確認書 隣地との土地の境界をはっきりさせるために測量(境界確定測量)を行い、その結果確定した境界を証明する書類
建物の請負契約書 注文住宅の場合やリフォーム工事の際に施工会社と結ぶ工事・建築に関する契約書
建築確認済証、検査済証 建築基準法に則って建築された物件であることを証明する書類
建設設計図書・工事記録書 建築にあたり設計・工事の実施工程を記録した書類
リフォーム履歴の分かる資料 リフォームをした場合、その履歴が分かる資料

測量図は、作成日が古いものは土地境界線について所有者の立ち合い等が行われていないものも含まれており、再度作成が必要になる場合があります。
普段あまり目にすることのない書類もあり、書類の準備に重荷に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、スムーズに売却を進めていくためにも、書類の不備がないように事前準備をしましょう。

1-4. 土地と建物の権利や状態をチェック

土地の権利状況や建物の状態は、査定価格への大きな影響要因となります。売る土地の範囲を正確に把握し、隣接する道路の状態や接道情報も詳細に確認することが重要です。これは後々のトラブルを防ぐための前提作業となります。

1-5. 築年数が経った物件の取り扱い

築年数が経った一戸建てを売る際、必ずしも中古物件として売り出すのが最良の選択ではありません。

中古物件の場合、購入者は住宅ローン控除の恩恵を受けることができる(対象条件があります)。住宅ローン控除とは、所得税や住民税で、住宅ローン残高の1%を最長10年間控除することができる制度のことを指します。 この控除を受けるためのキーとなる条件の一つは、物件が築20年以内(耐火建築の場合は築25年以内)であることです。しかし、2005年の税制変更により、築年数がこの基準をクリアしていない物件でも、新耐震基準に準拠していることが証明できれば、住宅ローン控除が適用されるようになりました。

また、土地の価値だけを考えて売却するという選択肢も考えられます。建物が古くなった場合、その土地だけを売る、あるいは建物を解体して更地にしてから売却すると、購入者にとって魅力的と感じられることもあるでしょう。

1-6. 共有者がいる場合

売却する一戸建てに共有者がいて、「共有名義」で所有している場合、全員の売却意思を確認しておく必要があります。
共有名義とは、不動産を取得するために共同で出資し、出資額の割合に応じた所有持分で登記(権利関係などを社会に公示するため登記簿に記載)することです。共有者が一人でも売却を拒否すると、売却できなくなってしまうので注意しましょう。

1-7. 相続する場合/相続した場合

一戸建てを売却するタイミングについて、特にご高齢の方は「自分が存命のうちに売却するか」「そのまま残すか」で悩むことがあります。相続が発生する前と後の売却では、どちらにどのようなメリット・デメリットが発生してくるのかを理解して、売却のタイミングを考えましょう。